コラム

外国人犯罪は本当に増えているのか?警察庁統計から見る日本の治安の実態

2026/01/25 00:00

外国人犯罪は本当に増えているのか?警察庁統計から見る日本の治安の実態

最近「外国人犯罪が増えている」と言われる理由


最近外国人による犯罪の検挙数があたかも上がったかのような話をよく耳にするようになりました。

SNSでしばしば見られる「外国人による犯罪の検挙数が上がった」という話には、一部の統計上の増加傾向を断片的に取り上げている側面があります。

SNSの拡散構造や動画・切り抜きの文化、国籍を強調する報道の影響が大きく働いています。そこでSNS等で囁かれる「外国人犯罪の急増」という言説に対し、警察庁が公表している客観的な統計データに基づき現状を分析してみました。

今回参照した警察庁公式統計について


今回警察庁の公式サイトにアップロードされている犯罪統計を参照して調べてみました。
警察庁公式犯罪統計

警察庁の発表している犯罪統計のうち、令和元年から令和7年(1月〜11月暫定値)までの刑法犯検挙人員総数および、そのうちの「来日外国人」の検挙人員の推移を調べました。

尚、本統計における「来日外国人」とは、日本にいる外国人のうち、永住者、在日米軍関係者、在留資格不明者を除いた者を指します。ここに含まれるのは、就労ビザ、留学生、観光客など、いわば「一時的に日本に滞在している人々」を指します。

犯罪分類別に見た検挙状況の特徴


令和(令和元年〜令和6年)になってからの件数が多い犯罪分類の上位5つは以下になります。

窃盗犯:166,049件 令和年間を通じて常に最も検挙数が多い犯罪群。万引き、車上ねらい、自転車盗、侵入盗などが含まれます。

粗暴犯:47,596件 暴行(24,869件)、傷害(17,954件)、脅迫(3,535件)、恐喝(1,237件)などが含まれます。

その他の刑法犯:32,809件 占有離脱物横領(9,936件)、住居侵入(5,422件)、器物損壊等(8,106件)などが含まれます。

知能犯:19,423件 詐欺(16,175件)、横領(1,508件)、偽造(1,585件)などが含まれます。

風俗犯:15,168件 不同意わいせつ(5,857件)、公然わいせつ(1,694件)、性的姿態撮影等(6,867件)、賭博(244件)などが含まれます。

※なお、殺人や強盗などの「凶悪犯」の令和6年検挙数は6,228件であり、包括罪種別では上記5つに次ぐ順位。


これらのうち来日外国人による検挙数はこちらになります。(表内一番右です)

年次1. 窃盗犯2. 粗暴犯3. その他の刑法犯4. 知能犯5. 風俗犯刑法犯検挙総数うち来日外国人
令和元年 (2019)180,89747,98935,08019,0966,904294,20611,655
令和2年 (2020)170,68745,76433,76418,1536,549279,18511,756
令和3年 (2021)161,01643,29130,27919,1546,738264,48510,677
令和4年 (2022)148,12243,49929,35018,8096,648250,3509,548
令和5年 (2023)157,11547,73631,73719,5598,571269,55011,534
令和6年 (2024)166,04947,59632,80919,42315,168287,27312,170
令和7年 (2025) 暫定値159,70945,24430,66818,81615,581275,98811,541

刑法犯全体に占める来日外国人の割合


「外国人が増えて治安が悪化した」という印象論に対し、統計データは異なる実態を示しています。来日外国人による検挙人員の割合は、令和元年から令和6年に至るまで、一貫して全検挙人員の約6%前後で推移しています。

年次刑法犯検挙人員 総数(内数) 来日外国人割合
令和元年 (2019)192,607人11,655人6.05%
令和2年 (2020)182,582人11,756人6.44%
令和3年 (2021)175,041人10,677人6.10%
令和4年 (2022)169,409人9,548人5.64%
令和5年 (2023)183,269人11,534人6.29%
令和6年 (2024)191,826人12,170人6.34%
令和7年 (暫定値)182,883人11,541人6.31%

重要犯罪・重要窃盗犯における国籍別傾向


次に治安情勢の指標となる「重要犯罪(殺人、強盗等)」および「重要窃盗犯(侵入盗、自動車盗等)」に限定した、来日外国人の主な国籍別内訳です。来日外国人による「重要犯罪・重要窃盗犯」の検挙人員において、常に上位を占める「主要4カ国」を個別項目で記載します。

年次来日外国人 合計ベトナム中国ブラジルフィリピン
令和元年 (2019)482人89人120人28人51人
令和2年 (2020)553人115人89人55人25人
令和3年 (2021)618人223人96人42人33人
令和4年 (2022)584人183人94人40人21人
令和5年 (2023)742人239人97人49人29人
令和6年 (2024)888人263人126人54人45人
令和7年 (2025) 1-11月暫定値897人287人103人50人50人
国籍検挙人員(重要犯罪・窃盗)在留人口規模(参考)傾向分析
ベトナム263人急増中5年で検挙人員が約3倍に急増しており、人口増を上回るペースで犯罪が顕在化。
中国126人最大規模在留人口が最大だが検挙人員は安定推移しており、人口あたりの率は低い。
ブラジル54人中規模令和元年の28人から倍増。
フィリピン45人中規模人員は緩やかな減少傾向で、安定している。


結果ですが、「重要犯罪(殺人、強盗等)」および「重要窃盗犯(侵入盗、自動車盗等)」においても、外国人の割合が激増している事実は確認できません。

ベトナム国籍の検挙増加が示す制度的課題


しかし、ベトナム国籍の来日外国人による重要犯罪・窃盗犯の検挙人員がこの5年で3倍に増えているというところに関しては、特定のコミュニティや滞在形態における治安課題が顕在化していることを示唆しています。

ベトナム国籍の来日外国人は、近年「技能実習生」や「留学生」として激増しました。統計資料には直接の記載はありませんが、技能実習制度等を利用して来日した若者が、多額の借金(送り出し機関への支払い等)を抱えて来日し、劣悪な労働環境や低賃金に耐えかねて失踪するケースが相次いでいるみたいです。

令和6年の統計では、ベトナム人の重要窃盗犯検挙人員184人のうち、156人が「侵入盗」で占められています。技能実習制度を巡る構造的問題が、特定層の生活不安定化を招いている可能性は、複数の報告や研究でも指摘されています。

データから見える本当の結論


まとめると、「外国人犯罪が急増している」というイメージは、統計データから見る限り事実とは言えません。

警察庁の犯罪統計では、来日外国人による検挙人員の割合は、ここ数年ずっと全体の約6%前後で推移しており、大きく増えているわけではありません。近年、外国人の検挙数が増えたように感じられるのは、犯罪全体の検挙人員が増えていることや、日本を訪れる外国人の数自体が増えていることが主な要因です。

その一方で、特定の国籍や犯罪の種類に限って見ると、技能実習制度などの仕組みの問題によって、生活が不安定になり、結果として犯罪に結びついてしまうケースがあることも示唆されています。

今後は「外国人が増えたから治安が悪くなった」と単純に考えるのではなく、制度や環境の問題に目を向け、冷静に実態を見ていくことが重要だといえるでしょう。